この記事では、数か月以上たっても治らない痛み、慢性疼痛に対するクレニオセイクラルセラピー(以下CST)のエビデンスをご紹介します。
引用する医学論文は海外のもので、論文サイト『PubMed』から引用しました。
今回紹介するのは複数の論文を集めて検証する、『メタアナリシス』というものです。
論文の発表機関
論文を発表した研究機関は以下の通りです。
①デュイスブルク大学医学部(ドイツ)
②ハンベルク社会財団内科・総合医療科(ドイツ)
③オーストラリア補完統合医療研究センター
④シドニー工科大学(オーストラリア)
⑤カロリンスカ研究所(スウェーデン)
⑥モナッシュ大学看護学および助産学科(オーストラリア)
⑦エヴァン内科・統合医療科(ドイツ)
研究手法
①首・背中の痛み
②頭痛・偏頭痛
③線維筋痛症
④上腕の痛み(肩を含む)
⑤骨盤帯の痛み
以上5つの症状を持つ681名の患者を対象にして、
マッサージやトリガーポイント療法と比較して、CSTの施行前後で痛みの強度、そしてQOLが変化するか、そしてその効果がどれくらい持続するか
を検証しました。
QOLは、直訳すると人生の質・生活の質となりますが、『人生の幸福度』といってもよいでしょう。
研究の結果
痛みの強度に関しては、マッサージおよびトリガーポイント療法と比較して、CSTのほうが統計学的に意味のある疼痛の改善があり、その効果は約6か月間持続したとのことです。
QOLに関しては、マッサージおよびトリガーポイント療法も含めて、統計学的に意味のある改善は見られなかったそうです。
なぜCSTが慢性疼痛に効くのか
一般的に慢性痛を持っている方は、交感神経が過活動を起こしています。
交感神経とは『活動の神経』であり、人間が活発に動き回るために必要な変化を身体に引き起こします。
代表的なものは、
①脳の覚醒↑
②脈拍・呼吸数↑
③筋緊張↑
④血圧↑
⑤血流↓
特に③、④、⑤が重要で、これが長く続くと傷ついた細胞組織の修復がうまく進まず、いつまでたっても治らない状態、つまり慢性化してしまいます。
これに対して、CSTの優しくゆるやかなタッチは、副交感神経の活動を高めます。
副交感神経とは『休息の神経』であり、人間が心身を回復するモードに入ることをアシストします。
副交感神経がよく働くと、以下の変化が起こります。
①脳の覚醒↓
②脈拍・呼吸数↓
③筋緊張↓
④血圧↓
⑤血流↑
脳の覚醒が落ちてリラックスモードになり、筋緊張が低下し、血流が増加することで、傷ついた組織の修復が進みます。そして、痛みの原因となっていた発痛物質が洗い流されていきます。
結果として、慢性的に続いていた不快な痛みが消えていく、ということです。
慢性疼痛とQOL
痛みが消えていくのに、人生の幸福度が上がらないという結果は、非常に興味深いものです。
痛みのある人生と、痛みのない人生。
どちらが幸福そうかは火を見るよりも明らかですが、実際はそう単純ではないのかもしれません。
人によって幸福の尺度は様々です。
私のような施術する側にとっても、考えさせられることです。
施術者一人一人の努力ではどうしようもない、それこそ社会や政治を巻き込んだ話になりかねません。
ですが、施術者として痛みを取るのは当然として、お客様が真に幸福になれるよう、今後も努力を重ねていきます。
まとめ
①CSTは慢性疼痛を改善するエビデンスがある
②CSTの効果は約6か月間持続する
③QOLの改善は複雑な問題をはらんでいる。
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